今回は、ほとんどの人には関係のない話題です。
イタリアで妊娠、出産を考えている方。あるいは出産した方で、イタリアの薬事情や乳腺炎、母乳トラブルを抱える方に向けて書きます。
使わなくなった薬類を捨てようと思ったので、その前に覚書です。
まず最初に、イタリアと日本では妊婦および出産にまつわる医療は、大きく異なります。
だからイタリアで結婚して妊娠しても、不安になることってあると思う。
そして何より大変なのは、イタリアで母乳トラブルを抱えた時のこと。
日本では桶谷式などが主流で、専門のマッサージをしてくれる助産婦さんが沢山いるようですが、ここイタリアにそのようなものはありません。
(正確に言うと、桶谷式ではないけれど母乳トラブル向けのマッサージをする人はイタリアに数名いるようです。主に、北に。少なくとも私の指圧の師匠が調べたところでは、トスカーナ州は皆無でした)
さて、まずは妊娠したら最初に飲むのもの、それは上の写真の葉酸です。
これは日本も一緒ですね。
(葉酸はイタリア語ではacido folico。)
ただ、飲む期間についての指導が日本とイタリアでは異なるようです。
私の主治医は飲む期間についてちゃんと指導してくれなかったので、イタリアで妊娠した場合「葉酸はいつまで飲めばいいですか?」とちゃんと言葉に出して確認しましょう。
葉酸の購入には処方箋が必要です。
それから、私は妊娠中このサプリを飲んでました。
MulticentrumのMaternaです。
妊婦および授産婦に必要な栄養素が入っています。
これはスーパーで気軽に買えるお手軽サプリなので、気休め程度かも。
でも、処方箋が必要ないサプリとしては鉄分の量が多いです。
(鉄分サプリとして売ってるものより、ずっと配合量が多かった)
もちろん、こういうものを飲む時は主治医にまず確認しましょうね。
こちらは、処方箋が必要な鉄分サプリ。
私は妊娠中、かなり鉄分不足でした。
食事にはそうとう気を使っていたし、鉄分についても注意はしてたんですが、普段からちょっと不足ぎみらしいんですよね、体質的に。
鉄分が不足したせいか、あるいは別の理由かわかりませんが、妊娠中息切れがものすごく激しくて。
胸の圧迫感、息ができない感じにかなり悩まされました。
主治医にその旨相談したら、まずは心臓の検査。
そこで心臓には問題がないことがわかったので、血液検査の結果に基いて鉄分を処方されました。
(たぶん、動悸の原因は鉄不足だけが原因じゃなかったけどね。)
まず最初に軽いサプリを処方され、しばらく試した後もう一度血液検査を見て改善しなかったら更に強いサプリを出す、という感じ。
私の場合軽いサプリでは改善したりしなかったりだったので、更に強いものを2種類処方されました。
そのうち1つは強力なもの、もう一つはもう少し軽いもの。
どちらをどのように何日飲むか、医師に指導されました。
ここからは産後のお話。
これは赤ちゃん用のサプリです。内容はビタミンD3やビタミンK。
最初の二ヶ月は私も何とか頑張って母乳育児してたんですが、母乳にはビタミンKなどが不足しているため、完母で育てるとくる病などのリスクが増加することが最近の研究でわかっています。
ここイタリアでも、日本でも、「母乳こそ正義!母乳あげるべき!」みたいな風潮がどうもあるように感じるんだけど、母乳も完璧じゃぁないってことを覚えておくべきだと私は思います。
ミルクで育てる場合、このサプリは必要ないでしょう。
いつからいつまでサプリを与えるのか、小児科医にきちんと確認してください。
で、ここからが本番。
ここまではどれもサプリで、そんなに注意しなくても大丈夫なものばかりですが、ここからは母乳トラブルを抱えた人用です。
前にもちょっと書いたと思うけど、娘はおっぱいを飲めず、胸は詰まるわ乳腺炎やるわ、そりゃあもう大変でした。
イタリアでの母乳トラブルは、上に書いたように桶谷式とかない分、大変だと思います。
今まさにイタリアで母乳とか乳腺炎とか詰まりとかで悩んでいるという人がいたら、まずは労りの言葉を掛けたい。それがどんなにツラく不安なことか、私はよぉぉぉおおおおっくわかります。
私はかなり先進的で設備の整った産院で出産しましたが、そこの母乳外来の対応を見てみて1つ言えることは、イタリア人は母乳トラブルについて正しい知識を持っていません!
ひょっとしたらイタリア人は日本人に比べて乳腺が詰まりにくい、のかもしれない。
もともとオリーブオイルとパスタの国の人たちです。特にトスカーナなんか肉食だし、先祖代々そういう食事をしてきたら、体がそれに対応してるのかも。
どちらにしてもいざイタリアで乳腺が詰まってしまったら、イタリア人の言うことは疑ってかかった方がいい。
日本式を知るため、ネットなどを駆使して情報収集をしましょう。
それでもどうにもならなかったら、私にメールしてくれてもいいです。
私は医師ではないので個人的経験に基づいた話になってしまうけど、かなり勉強はしたのである程度のアドバイスはできるし、少なくとも孤独感を減らすお手伝いはできるかもしれない。
経験から言うと、イタリアでの母乳トラブルは、孤独や不安との闘いです。
もしそういう状態になってしまったら、このサイトの「予約・問い合わせ」のフォームからメールを送ってください。
(イタリアで、母乳トラブルに悩んでる場合のみ対応します。もし日本にお住まいなら、お近くの母乳外来を受診してくださいね)
少しでも困ってる人の助けにないたい、と本気で思うくらい、当時の私はツライ思いをしました。
さて、前置きが長くなったけど、乳腺炎をやるとまず処方されるのが上の写真の薬です。
上は抗生物質、下は確か消炎剤でした。
特に、上のアウグメンティンとは、この先切っても切れない関係になりました(苦笑)
アウグメンティンは、母乳育児をしながらでも飲むことができるイタリアでは恐らく唯一の抗生物質です。
一日2回、これを飲みます。
心配しなくても、乳腺炎自体はこの2つを飲めば数日で治ります。
抗生物質って神!って思える瞬間ですw
なんせ、熱が40度近く出ますからね、それが下がるだけでも光が見えるってもんです。
この対応だけで母乳トラブルが解消すれば一週間くらいアウグメンティンを飲むだけで解決するんだけど、私みたいにその先も乳腺の詰まりや、しこり、痛み、もろもろを併発すると、長い闘いになります。
これは、乳首が切れて出血した時用の塗り薬。
おっぱいを順調に飲んでくれる赤ちゃんでも、噛まれたりするとこれが必要になるかも。
赤ちゃんの口に入っても安心な成分でできているので、授乳をしていても乳首に直接塗ることができます。
娘は二ヶ月を越えるまでおっぱいに吸い付くことはできなかったけど、私は一日5〜7回搾乳器で搾乳してたし、しこりを取るため色々してたので、時々切れて出血しました。
痛いんだよね〜。
何より悔しいのは、せっかく搾乳した母乳が血で赤くなっちゃうこと。
なんせ泣きそうな痛みに耐えて搾乳してるんで、貴重な母乳が!!!!ってなるよね〜。
効き目は穏やかだけど、この薬もそこそこ効きます。
母乳育児の必需品と言えるでしょう。
薬局で処方箋なしで買えます。
イタリア語ではオメオパティア、日本ではホメオパシーと言うのかな?
同毒療法とか言うそうですが、胸のしこりについて相談して薬局で渡されたのがこちら。
小さなラムネみたいなのが入ってて、空腹時に舌の下で溶かすように言われました。
ホメオパシー自体が自然治癒力を引き出すというかなり効き目の緩やかなタイプのものなので、それなりに長い期間飲んだけど効き目は感じられなかったなぁ。
この頃にはもう、藁にもすがる思いだったので、効くと言われたものは片っ端から試しました。
もちろん、食事療法もしてた。
オイル抜き、脂質を減らし肉食をやめて野菜や魚中心の生活。
温タオルやマッサージ。それも搾乳のたびなので、多い時で一日7回!!!
温タオル&マッサージが一回45分で、搾乳が一回30分。
それプラス、お風呂の中でマッサージしたりシャワーを当てながらマッサージしたり。
しかも痛いんだな、それが全部。
当然赤ちゃんのお世話しながらだから、それこそ寝ずにマッサージ&搾乳ですよ、ほんと。
寝かしつけたらまず搾乳!という生活。
これを二ヶ月続けるとか、よくやったと思うわ。ほとんど寝てなかったんじゃないかな。
しかも最初の一ヶ月は、少しでも早くおっぱいを吸えるようにするために授乳は哺乳瓶を使わずにシリンダーだったんだから!!
あー、あと写真はないけどLatte piu という名前の母乳の量を増やすサプリも飲んでたな。
それから、日本から急遽送ってもらった牛蒡子も飲んでました。乳管の詰まりを取ると言われる劇マズの漢方ね。
それぞれに空腹時(しかもホメオパシーは食事から3〜4時間は離さないとダメ)だったり満腹時だったり朝だったり寝る前だったり服用時間が違うので、もう、しょっちゅう何か胸のために摂ってる感じ。
胸のことしか考えられない日々だったな〜。
乳腺炎は治ったものの、しこりがね〜、取れなくて。
多少良くなったと思ってもすぐぶり返したりして、この頃の私は胸関係の外来(イタリア語ではsenologiaセノロジア)の常連でした。
最初に病院行った時、かなり大きなしこりができていてしかもそれが痛かったので、先生に注射器をぶっ刺してもらい、中に溜まった膿んだ母乳を吸い出してもらいました。
これも痛いんだよ、当たり前だけど。おっぱいに針刺すわけだから。
けどしこりが目に見えて小さくなって、きっとこれで治ると思ったら舞い上がるような気持ちでした。
(治らなかったけどな・笑)
注射器で吸いだした膿んだ母乳は精密検査に回され、そこで成分の分析(本当にただの膿んだ母乳かどうか。乳がんなどの疑いはないか調べる)をして、ついでに私の体に合う抗生物質はなにかを調べる検査もしました。
当時は母乳を赤ちゃんに飲ませてたんで必然的に抗生物質はアウグメンティンしかダメだったわけだけど、もし母乳を止める決意をしたら、アウグメンティンより強力でより私の体に合った抗生物質を飲んで、一気に細菌を叩くことができる。
そのために、どの抗生物質が一番私に効くのかを調べる検査です。
アウグメンティンが本当に効いてるかどうかも調べてもらうはずだったのに、さすがイタリア、申請が足りなかったのかアウグメンティンについては検査漏れ。
有難いことに正真正銘ただの膿んだ母乳だったんだけど、注射器で吸い出しきれなかったものが胸の中に残ってしまって、しばらくしたら今度はそれが痛みだした。
固い石が胸の中にあるみたいな手触り。
senologiaで一度診てもらったら、これはエコー検査をしながら吸い出さないと無理だと言う。場所が深すぎたのね。
というわけで今度はエコー検査。
これがまたイタリアらしく大変だったけどその話は蛇足なので置いておいて、エコーで中の膿の場所を特定。
で、エコー当てながら同時に針を刺して針をしこりの場所に到達させ、一気に吸い出します。
この時の針がね〜、今まで見たこと無いほど太いやつで、めっちゃ痛かった!!!
人間用とは思えない太さ、長さ。
馬用でああいうの見たことあったけど(爆)
強烈な痛みに耐え、なんとかしこりを吸い出してもらって。
前回の吸引の時もそうだけど、この時も処置の後はまた抗生物質の投与が始まります。
アウグメンティン、何錠飲んだかわからん。
ここまで読んでもらえばわかると思うけど、私の母乳トラブルは非常に「運が無い」ものでした。
普通ならこんだけ頑張れば症状は改善するはずです。
注射器だってそう何回も刺さなくていいはずだし、抗生物質だってこんなに長い間飲まなくてもいい。
でも私の場合、1つの症状が改善してもまた次、またその次と次々問題が起き、どう頑張っても100%治ることがなかった。そうとう不運なケースです。
2ヶ月経つ頃には症状の改善のために必要なことも段々つかめてきて、マッサージのコツもわかってきたし、それなりに良くなる兆しも見えてきていたんだけど、ここでまた問題が。
夫がバイクでこけて、腕を骨折www
アホか〜!!!!
最低でも一日4〜5回搾乳(&マッサージ)をしようと思ったら、その間赤ちゃんの世話をしてくれるパートナーがどうしても必要です。
症状は改善してきていたけど、ここで治療や搾乳を怠ればまた痛いしこりができるのは目に見えてた。
それでなくても私の乳管は詰まりやすくて、わずかな気の緩みでもあっという間に痛みが出るのに。
夫はバッチリ腕を石膏で固めた状態になり、娘を抱くことも哺乳瓶で授乳することも、その他すべてのことが不可能になりました。
それどころか、自分の体も自分で洗えない。着替えも1人じゃできない状態。
はい、無理ゲー決定!
時はクリスマスシーズン真っ盛り。
うちは義母が寝たきりで24時間介護が必要なんですが、クリスマスには介護の人が休暇を取るため私たちが付きっきりのお世話をしないといけません。
イタリアではクリスマスは超重要な大イベントなので、パーティーの準備(というかご馳走作り)もある。
生後二ヶ月の娘、腕が折れた夫、寝たきりの義母、クリスマス、これらを全部一人で抱えた私は、病院の先生や助産婦さんたちと相談の上、とうとう母乳を止める決意をしました。
本当は、止めたくなかった。
胸のしこりは改善の兆しが見えてきたし、娘も時々おっぱいを吸えるようになってきていて、この二ヶ月間の努力が実り始めた矢先でした。
でも、搾乳やマッサージの時間が取れない以上、ここが限界。
senologiaの担当医に書いてもらった処方箋が、上の写真のドスティネックスという薬でした。
母乳を止める薬ね。
中には茶色の小瓶が入っていて、2錠入り。
(後で知ったけど8錠入りもある。後述するけど2錠では足りない場合もあるので、買えるなら最初から8錠入りを買った方がいいと思う)
これを、1錠を半分に割って4回に分けて飲みます。
一度これを口にしたら、もう母乳はあげられません。成分が母乳に溶け出して赤ちゃんの毒になるから。
泣いたな〜。泣けた。ぶっとい針をおっぱいにぶっ刺した時より泣いた。
少しでも美味しくて栄養のある母乳を、娘に飲ませたかった。
毎日の練習が実ってようやくおっぱいに吸い付いてくれた時はあんなに嬉しくて、幸せで、でもそれももうできない。
でもまぁ、飲みました。
ドスティネックスを飲んだ後、細菌を一気に叩くため、精密検査で効くとわかっていた抗生物質を飲みました。
ドスティネックス、飲んだらすぐに母乳が止まるもんだと思ってたんですがね。
これが罠でした。
主治医からもその他の医師たちからも、誰一人として説明してくれなかったんだけど、母乳を止めるってそう簡単なもんじゃぁなかったんです。
水道の栓を閉めるのとはわけが違ってた。
搾乳すると更に母乳の分泌を促してしまうので、搾乳ができません。最低限、圧抜きをする程度。
するとまぁ、なんちゅーか、爆発しそうな風船みたいになるんですな、おっぱいが。
ガッチガチに張ってしまって、歩く振動だけで痛い。
慌ててネットで調べたら、日本語のサイトにはちゃんと書いてありました。
「薬で断乳する時は3日間は何もできなくなりますので、旦那さんやご家族の休日など、家事や育児を他の人に代わってもらえる時を選んで服用しましょう」
だ、騙されたー!!!!そんなこと、誰もひとっことも言ってくれなかったじゃん!!!
ドスティネックスという薬は、まさに「ご利用は計画的に」なお薬だったのです。
今後イタリアでこの薬を飲む方がもしこのブログを目にしたら、忙しい時にあわてて飲んでは絶対にダメです。
何度も言うけど、イタリア人の言うことを信用してはいけません。
私の場合は服用から数日後に病院を受診し、もう2錠出してもらいました。
でもまぁ結局は、耐えるしかないんだよね。
服用してからネットで断乳の仕方を調べて、それに沿って断乳したけど、そういうことは飲む前に計画すべきでした。
(だって、イタリア人の医師は断乳の仕方なんて一言も教えてくれなかった)
ネットで調べると、薬を飲んだ後どのようにして圧を抜くか、何日に一度搾乳するか、詳しいことが書いてあります。
皆さんは気をつけてくださいね。
以上、母乳トラブルについて私の経験談と、イタリアで一般的に使われている薬の紹介でした。
これに限ったことではないけど、イタリアの病院ではこちらから質問しないと大事な情報すら教えてもらえないことが往々にしてあります。
知ってて当たり前、知ってると思ってた、と言われるかもしれないけど、こちらは初出産初育児、そもそも外国人。
知らないことだらけなんです。
大事なのはネットでの情報収集。
イタリア人医師より詳しいくらいになって、こちらからどういう治療をしたいのかハッキリ言えるくらいじゃないと、先に進みません。
こういうの、外国でやるのはすっごく大変です。
周囲の人にもおっぱいの痛みなんてわかってもらえないから、回りは平気で「頑張れ」「諦めるな」と言ってきます。
夫がイタリア人の場合でも、男性は婦人科系の事情なんてわからないから、助けにはなりません。
私と同じようにイタリアで、たった一人で誰にも助けてもらえず、新生児を抱えて母乳トラブルに悩んでるお母さんがいたら、少しでもこのブログがお役に立てれば幸いです。
コメントをお書きください
KAN (金曜日, 14 11月 2014 13:32)
初めてコメントします
1歳半の息子がいて、スペインで子育てをしています
DOSTINEXを半錠飲んでから、ここにたどり着きました
乳首が切れたり、詰まったり・・・
楽しい授乳とつらい授乳の繰り返しでした
もう読みながら うなずきっぱなしです
ありがとうございます!!!
佐藤モカ (日曜日, 14 12月 2014 17:24)
KANさん、コメントに気付くの遅れてごめんなさい。
スペインでの育児、お疲れ様です。
授乳トラブルの苦労、よおぉおおおおっくわかります!!!
それでも1歳半まで授乳されたなんて、偉いです。尊敬します。
息子さんはKANさんの愛情をたぷり受けて幸せ者ですね。
DOSTINEXを飲まれたとのことですので、断乳後のケアやご自身の体のケアをしつつ、ご家族とどうぞ楽しい育児を☆